公開日:2026年09月24日
令和8(2026)年度診療報酬改定において、「重症度、医療・看護必要度」のA・C項目に新たな診療行為や医薬品が追加されるなど、内科系技術の評価が拡充されました。長年、定量化の困難さなどの要因から、診療報酬における内科系技術の評価は十分ではないとの指摘があり、この課題を解決するため、一般社団法人 内科系学会社会保険連合(内保連)は、客観的データに基づいて医療費の適正配分を提言してきました。内保連医療技術負荷度調査委員会委員長を務めるなど、その実現に尽力されてきた髙橋和久先生(順天堂大学大学院医学研究科 医学研究科長、順天堂大学医学部 医学部長 呼吸器内科主任教授)に、今般の内科系技術にかかわる改定内容や、改定に至るまでの経緯、そして、これからの医療保険制度の在り方について伺いました。
(取材日時:2026年2月24日 取材場所:日本化薬株式会社本社会議室)
2026年09月24日公開
順天堂⼤学⼤学院医学研究科 医学研究科⻑
順天堂⼤学医学部 医学部⻑ 呼吸器内科主任教授
⼀般社団法⼈ 内科系学会社会保険連合 副理事⻑
⼀般社団法⼈ ⽇本呼吸器学会 理事⻑
髙橋和久先生
(役職はすべて、取材時点)
医療費の適正配分に向けた内保連の取り組み
令和6(2024)年度診療報酬改定による影響の分析
令和8(2026)年度診療報酬改定における内保連の提案
令和8(2026)年度診療報酬改定における成果と今後の展望
これからの医療保険制度
内保連の活動にはさまざまな重点領域がありますが、なかでも大きな課題として取り組んできたのが、内科系技術に対する診療報酬上の適正な評価です。これまでの診療報酬体系では、手術を行うほど重症度、医療・看護必要度が高く判定される傾向にあることから、外科系診療に重きを置く病院が診療報酬上も評価されてきました。一方で、内科系診療に労力を割いている病院は、それに見合う適正な評価を十分に受けられていないという指摘が以前から根強くありました。
この適正評価の実現に向けた課題の一つとして、厚生労働省との議論のなかでは、内科系技術には個々の負荷度を示した客観的なデータが存在していない点が指摘されてきました。外科系技術には、一般社団法人 外科系学会社会保険委員会連合(外保連)による外保連試案が存在し、各手術のコストを明らかにするために、手術の難易度、必要なスタッフ数、所要時間、医師や看護師、臨床工学技士などの人件費などが明示されています。このような客観的指標・データがあるからこそ、厚生労働省は外科系技術を評価してきた背景があり、内保連に対して同様の指標を作成する必要性があるとみなしていました。
しかし、内科系技術の負荷度に関する客観的なデータベースの構築は、きわめて困難な作業となります。手術であれば必要な専門性や難易度、時間などで測定することが可能です。一方で、内科系技術のなかでも、例えば、臨床推論は、診断に至るまでの思考の負荷が大きくかかりますが、数値化するのは容易ではありません。
そこで、内保連では、内科系診療で診断や治療方針決定に負荷がかかる26の重篤な急性疾患・病態を選定して「特定内科診療」と命名し、「内保連グリーンブック2013年 内科系技術についての診療報酬評価に関する提案ver.1」1)に盛り込み提言しました。この取り組みは、平成28(2016)年度診療報酬改定において、当時のDPC(診断群分類)Ⅱ群病院(現行のDPC特定病院群)の実績要件3に特定内科診療が新たに加えられるという成果へ結びつきました(診療報酬では2疾患を1疾患に統合し25疾患)。
その後、厚生労働省と議論を続けるなかで、特定内科診療は内科系診療のごく一部のため、裾野までを網羅した客観的なデータが必要であるとの指摘を受けました。そこで、2018年に200床以上をもつ全国の98病院にご協力いただき、内科系診療におけるすべての疾患・病態を網羅した負荷度調査を実施することとなりました。そして、全領域で合計約5,000あるDPCコードのうち、全内科系DPCコード約1,800を対象に負荷度を定め、「内保連グリーンブック2020年 内保連負荷度ランクと内科系技術の適正評価に関する提言ver.1」2)として取りまとめるに至りました。
この負荷度調査を取りまとめるさなかに、内科系技術への不十分な評価の実態を露わにしたのが、新型コロナウイルスによる世界的パンデミックでした。急性呼吸不全に陥った患者さんに対して人工呼吸管理やときには血漿交換、さらにはECMO(体外式膜型人工肺)といったきわめて高度な治療を内科医が担いました。これらは手間と時間、そしてコストがかかる治療です。にもかかわらず、役割を担った病院が評価されないという事態に陥ったのです。高い感染リスクに晒されながら、使命感をもって最前線で患者さんを守った内科医が正当に評価されないことに、日本内科学会や内保連も声を上げました。私自身も実体験として強い危機感を覚え、内科系技術の適正評価の実現に向けて決意を固めたのです。
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