トレーシングレポートのレベルアップのための取り組み 〜長野県松本医療圏における薬薬連携を深めるポイント

公開:2023年03月03日
更新:2024年3月

社会医療法人財団慈泉会相澤病院
がん集学治療センター化学療法科兼
薬剤センター病棟薬剤業務課 課長
中村 久美 先生

松本保険薬局 事業協同組合
ほんじょう薬局
薬局長 ※取材当時
淺野 未代子 先生

クラフト株式会社
さくら薬局
松本本庄店
管理薬剤師 ※取材当時
木村 紗也加 先生

有限会社ニコニコ薬局
薬学博士
廣井 理人 先生

松本モデルとして知られる地域包括ケアシステムを構築してきた長野県松本医療圏。地域医療支援病院として中心的役割を担う相澤病院は、近年、近隣保険薬局との連携を進めてきました。なかでも外来がん薬物療法におけるトレーシングレポートを活用した取り組みによって、より深く強い薬薬連携を構築しています。今回、相澤病院がん集学治療センター化学療法科兼薬剤センター病棟薬剤業務課 課長としてこの取り組みに尽力されてきた中村久美先生とともに、近隣薬局で連携し活躍するほほんじょう薬局 薬局長 淺野未代子先生、さくら薬局 松本本庄店 管理薬剤師 木村紗也加先生、有限会社ニコニコ薬局 薬学博士 廣井理人先生に、薬剤師力の向上につながるトレーシングレポートの活用方法やポイントなどを語っていただきました。
(取材日:2022年9月21日(水)、取材場所:松本ホテル花月)

施設情報
社会医療法人財団慈泉会相澤病院
〒390-8510 長野県松本市本庄2-5-1
病床数460床
松本保険薬局事業協同組合ほんじょう薬局
〒390-0814 長野県松本市本庄2-4-1
クラフト株式会社さくら薬局松本本庄店
〒390-0814 長野県松本市本庄2-6-12
有限会社ニコニコ薬局
〒390-0814 長野県松本市本庄2-11-1

後編 トレーシングレポートを活用して薬剤師力向上をめざす具体的な方法

ここでは、実際のトレーシングレポートを評価したリターン情報紙がん薬薬連携症例集ステップアップレビューAizawaから実例を提示して、各保険薬局薬剤師の先生方に概要やポイント、印象に残った点など、中村久美先生に良かった点などをご解説いただきます。

トレーシングレポートの質を高め薬剤師力を向上させる具体的な手法・ポイント

淺野未代子先生の保険薬局における症例

あと一歩症例1、ナイス症例1:下痢への対応と次へつなげる組織力

淺野 私からは、まず「あと一歩症例」が「ナイス症例」につながった事例をご紹介します。「あと一歩症例1」は、初期の頃、当薬局のスタッフががん患者さんに電話フォローアップをし、軟便・水様便の回数が1日7回以上に増えた旨をトレーシングレポートで送ったところ、これはCTCAE(common terminology criteria for adverse events、有害事象共通用語規準) Grade 3に相当し、トレーシングレポートではなくすぐに受診勧奨をするべきだった旨のご指摘がありました。トレーシングレポートを受け取った中村先生も困ったのではないかと思います。その後、本人の了承を得て、この症例を薬局内で外来がん治療認定薬剤師も交えて共有して話し合いました。その後は、下痢を評価するブリストルスケールをみんなが使うようになり、また、今では、がんだけではなく他の疾患にも使えるようになっています。
 症例を共有して議論したことによって、下痢の対応を薬局内で共有することができたので、次の類似の「ナイス症例1」ではCTCAEに加えてブリストルスケールも使用して下痢を適切に評価しフォローアップすることにつなげられ、リターン情報紙でも評価してもらうことができたと思います。

中村 下痢のフォローアップという観点からは「あと一歩症例」とはなりましたが、経口補水液のアドバイスをしているといった良い点もありました。さらに、この症例を薬局内で共有して、次の症例ではしっかりと類似の下痢の患者さんをフォローアップできていることは、とても重要だと思います。「あと一歩症例」が「ナイス症例」を生んだという次につなげる姿勢が組織力として素晴らしいと思いました。

ナイス症例2:他科受診による併用薬

淺野 「ナイス症例2」は、保険薬局ならではのケースだと思いますが、病院で化学療法を実施中に、他の診療所で併存疾患の併用薬も処方されており、他科受診との兼ね合いが課題になった症例です。患者さんはがん治療とともに血糖管理に前向きに取り組んでいるのに、血糖値が下がらずにいたため、その旨を報告したところ、血糖値に影響する可能性のある制吐薬を変更していただくことにつながりました。リターン情報紙から、病院での治療の役に立ったことを知り、提供した情報が有益だったことに感激しました。

中村 私たちは当院の情報はわかるけれども、他施設の情報は保険薬局からトレーシングレポートを活用して送ってもらわないとわからないこともあるので、必要な情報を共有できたとても良い症例でした。

木村紗也加先生の保険薬局における症例

ナイス症例3、ナイス症例4:飲み間違い

木村 私からは、まず「ナイス症例3」と「ナイス症例4」をご紹介します。この2症例は、同じ患者さんに同じレジメンで治療を行ったもので、「ナイス症例3」は2クール目、「ナイス症例4」は6クール目です。1クール目は正しく服薬できており理解もあったので安心していたのですが、2クール目で経口抗がん薬の飲み間違いが起こった症例です。休薬が必要な経口抗がん薬でしたが、患者さん本人の思い込みで1日2回のところ1日1回と間違えていました。私たちは副作用の確認にとらわれがちですが、副作用だけではなく、経口抗がん薬や支持療法薬を正しく服用できているか、しつこく何回も聞いた方が良いと痛感しました。このときは、もう一度、電話で正しい服用方法を伝えて残薬を確認し、病院に情報提供した後、対応方法を聞いて、折り返し残薬の対応について患者さんに連絡しました。2クール目だけ服用を間違えてしまったのですけれども、それ以降は正しく服用でき、最終的には治療がすべて終了して3カ月に1回の経過観察となりました。

中村 薬を正しく服用できているかは、病院側としてとても大事な貴重な情報です。また、患者さんに電話で再確認する際に、「計10錠を服用」といった伝え方も印象に残りとても良いと思いました。休薬期間があると用法・用量を忘れてしまうかもしれないという指摘は、病院としても勉強になり、患者さんへ伝達する際に役立っています。

ナイス症例5:多数の副作用と簡潔な記載方法、処方提案

木村 「ナイス症例5」は、1クール目から悪心、嘔吐、食欲低下、倦怠感、口内炎、便秘と懸念されていた副作用が次々発現しました。これらの副作用を時系列に沿って伝えなければならないのですが、長々とならずコンパクトに、しかし十分な情報を伝えられるように文章をとても考えた症例です。それぞれの副作用に対して支持療法薬を提案しつつ、時系列で伝えることに苦心しました。提案を医師にすべて受け入れてもらうことができ、2クール目からは副作用はほとんどなくなりました。副作用対応を十分に行えたことがうれしく、また、文章を作る難しさを痛感した症例です。

中村 この文章にするまでにとてもご苦労があったことと思います。患者さんがたくさん話したことをここまでコンパクトにまとめつつ、的確な提案をされて、素晴らしいと思った症例です。

廣井理人先生の保険薬局における症例

ナイス症例6:緩和ケアと簡潔な記載方法、処方提案

廣井 「ナイス症例6」は、私が薬局薬剤師として働き始めて2年目の症例です。当時、麻薬の処方自体に慣れていないなかで、「経管投与する麻薬」が処方されており、これまで以上にどのようにフォローアップをすべきかが全く分からなかった症例でした。そのような背景の中、患者さん宅へ電話をした際、奥様より「入眠薬を朝に飲んでいるの」とのお話があり、最初から面を食らった状態でした。奥様いわく「朝、麻薬を投与した後にイライラしてしまうことを抑えるために入眠剤を使用していますが、辛そうなのでもう少し何とかしてあげたいです」という相談があり、そこで初めてご家族のもどかしさを知りました。
 前職が創薬研究員であったことから、PK(pharmacokinetics、薬物動態)の観点より消失が最も早いと思われる安定剤を模索し、ダメ元で主治医に提案してみました。その結果、私が提案した薬剤も踏まえた形で複数の薬剤が追加処方となりました。
 後日、フォローアップ目的でお電話したところ、奥様より「いつも、イライラしながらお腹が張って辛そうにして話もしたがらなかった主人が、『すごく楽になったよ』と言って話もしてくれるようになりました」と、思いがけない形で良いお話をお聞きすることができました。何が良いのかわからないながらもベストを尽くし、それが医師に受け入れられただけでなく、患者さんの緩和ケアサポートとして貢献できたと感じられたことは、とても感慨深いものがありました。

中村 当院の緩和ケア医は熱心に患者さんに寄り添うのですが、廣井先生のトレーシングレポートをとても感激しながら読まれ、実際に処方変更に至ったという経緯がありました。このトレーシングレポートには、それだけ緩和ケア医を動かす力があったと思うのです。大事なところに線を引いて目立たせたり、患者さんや奥さんが発した言葉を織り交ぜてポイントをまとめているのが素晴らしいと思います。また、その後のフォローアップで薬の効果を報告している点もとても良いと思いました。私にはできない提案だと思い、感謝の気持ちです。

病院薬剤師の立場で心がけているフィードバックのポイント

中村 トレーシングレポートに対するフィードバックについては、早く返したい点はメールで返答したり、電話で直接伝えるなどしています。また、トレーシングレポートに込めてくれた薬局薬剤師のみなさんの思いをできるだけ医師に伝えることを心がけています。本当に薬局薬剤師のみなさんは患者さんに寄り添って活動しているので、こちらとしても思いに応えたいと感じています。
 トレーシングレポートでは、薬学的な情報だけではなく、保険薬局薬剤師が患者さんをみるなかで感じた「状態が良くなり、ほっとした」という気持ちや心情などもとても大事な情報だと思っていますので、記載してもらえるとありがたいと思います。日頃から患者さんに本当に寄り添っているからこそ、そのような言葉が生まれるのではないでしょうか。

保険薬局の立場からリターン情報紙ステップアップレビューのさらなる充実をめざして

廣井 先ほども話題に上がりましたが、例えば、自分たちの薬局で経験したことがない薬剤でも、これまでのステップアップレビューのなかに簡潔にポイントがまとめられているので、ステップアップレビューを読み返すことで副作用やトラブルに関する情報を再確認するなど、困ったときに使える窓口として今でも活用させていただいております。
 要望ではありませんが、ステップアップレビューの掲載症例数が増えてきたので、一つ一つをコンパクトにまとめていくことが求められる状態になってきたようにも思います。

中村 確かに症例数が増えてきたので、廣井先生が仰るように、内容をコンパクトにまとめることで着目すべき点が見えてくると思いました。先生方のご協力によって、保険薬局薬剤師がトレーシングレポートを書く際の水先案内のような内容がまとまってきたので、上手く改良してポイントを押さえられるものにしたいですね。

廣井 トレーシングレポートに記入した方が良さそうな情報はあるか、記入しておくと相手側(病院側)が理解や対応しやすくなる情報はあるかなどは、トレーシングレポートを書くうえでも、掲載された報告書を読むうえでも意識しています。
 ステップアップレビューを読む側(病院側)にとっては、「実際には会っていない患者さん」に関する情報なので、「これまでの経緯」や「次回受診予定日」などを記載していくと理解しやすいのではないかなど、意識しています。

中村 廣井先生のトレーシングレポートには、常に次回受診日が記入されていますね。医師に情報を届けるという観点からは、記入があることで、そのトレーシングレポートは次回受診日に医師に見てもらえる確率が高くなると思います。もちろん必ず処方変更が必要な場合などは、医師に直接電話してみるようにお願いしていますが、次回受診日の情報はその点でもありがたいです。
 また、実際に記入していただいていますが、治療変更があり抗がん薬を減量したといったその時点までの経緯がまとめられていると、私もすべてを把握している訳ではないのでありがたいと思っています。

淺野 私としては、トレーシングレポートの送受信に関するシステムに関心をもっています。当薬局では薬剤ごとのフォローアップシートをまず印刷して電話フォローアップを行い、トレーシングレポートを手書きで書いて薬歴に付けるなどしてFAXで送信しています。たぶん中村先生は、そのFAXを見てパソコンで入力されているのではないかと思います。
ステップアップレビューをたくさん見てきたことで電話フォローアップや要点を書く作業はだいぶ早くなってきたと思うのですが、例えば、トレーシングレポートを患者さんの同意のうえで電子的に送信できるようなシステムで効率化できると、より多くの患者さんにフォローアップができるのではないかと思っています。

中村 そうですね。一方で、電子化が進むことが、逆に人間的な要素を失うこともなきにしもあらずとも思っています。みなさんの薬局からいただいている人間的な情報が、当院の緩和ケア医をはじめ医師たちが心を動かされる要素なのかなと思うところもあるので、それぞれの手段がもつ良さを活かしていきたいと思います。

ステップアップレビューがもたらすトレーシングレポート、フォローアップへの影響

図14 トレーシングレポートの課題克服による効果の概要
中村久美先生作成

トレーシングレポート提出件数の推移、フォローアップへの影響

中村 導入当初は少なかったトレーシングレポートの提出件数は、現在までに順調に増加してきました(図15)。質の向上に関しては、保険薬局のみなさんから教えてもらうことが多くなり、医師の反応を見ても「情報をいただけていると、こちらも短い診察時間に確認事項を絞れてお話できるので、本当に助かっています」といったお声もあり、トレーシングレポートによる情報提供に感謝されていることを実感します。質の向上に結びついていることを、保険薬局のみなさんにも実感してもらえるとうれしいと思っています。

浅野 対人業務へのシフトが言われてきましたが、ステップアップレビューのおかげで、フォローアップのしかたや内容の幅が広がり、より患者さんに寄り添えている実感があります。今までは薬を渡しているだけだったので、来局しなくなっても、その後がわからない患者さんがほとんどだったと思います。最近はあの患者さんが残念ながら亡くなられたと転帰を把握することが多くなりました。当薬局のスタッフを見ているとこの1~2年で、個々の患者さんへの思い入れが強くなり、寄り添えているのではないかと思っています。

木村 トレーシングレポートの提出枚数が増えるにつれて、同じレジメンでも聞き取る際の文言のバリエーションが増えてきたと感じています。高齢の患者さんや若い患者さん、要点だけを話した方がいい患者さん、詳細に話した方がいい患者さんなど、その人に合わせてフォローアップのしかたを変えられるようになってきました。個々の患者さんに合わせて自分なりに工夫して話したときに感謝の声をもらえると、このフォローアップのしかたで良かったのだと実感できます。フォローアップする際に開始当初に比べ心の余裕が生まれ、患者さんに寄り添って話せていると感じています。

廣井 中村先生が作成された聞き取り用シート、病院送付用シートのリストに基づいて電話フォローアップをくり返してきたことで、患者さんの現状に問題がないか、起こりやすい副作用症状のうち緊急性の高いもの、口頭の指示で良いものなどの感覚が養われ、緊急性判断の精度などが向上してきたのかなという感触をもちつつあります。
 また、個人的な意見ですが、患者さんが一番不安を感じているのは、がん治療初回なのではないかと考えています。「なぜ私ががんにならなくてはいけなかったのか」という悔しさを抱える患者さんもきっと多くいると思います。そのやり場のない思いや不安を「吐き出せる相手」になれることも、大切な役割なのではないかと考えています。また、重篤化する前の体調変化、すなわち初期副作用の発現により早く気づくためにも、いかに早く患者さんと良好なコミュニケーションが取れる関係を構築できるかは、とても重要と考えます。そのため、個人的には「初回フォローアップ」に重きを置いて対応しております。
 これまで、フォローアップやトレーシングレポート提出の経験を重ねたことで、患者さんに寄り添えるようになってきたと思います。変な質問で恐縮なのですが、逆に、ここにいらっしゃる先生方は患者さんに入り込み過ぎてしまうことで悩むようなことはありませんでしたか。

淺野 確かに、スタッフを見ていると一人の患者さんに時間をかけてしまい、「こちらにも患者さんが待っているよ」というときもありますね。

木村 薬のことになると長く話し過ぎるときがありますね。

廣井 私個人の感覚として、電話でのフォローアップを行う以前とでは、患者さんとの距離感がとても変わったように思います。辛いがん薬物療法を懸命に頑張っている患者さんの様子を目の当たりにしていると、ときにのめり込み過ぎてしまい、患者さんとの距離感が難しいと感じるときがあったため、質問させていただきました。

図15 相澤病院におけるトレーシングレポート提出件数の推移(2020年7月〜2023年1月)
中村久美先生提供

おわりに

薬薬連携を円滑に進めるポイント、心がけ

中村 薬薬連携を進めるためには、私としては、キャッチボールができるかどうか、フィードバックをすることがポイントだと思います。

淺野 中村先生と同じくキャッチボールが重要だと思います。保険薬局として患者さんの何をフォローアップするといいか最初わからなかったときに、病院側のニーズを示してくれたこと、そして、保険薬局側からそのニーズに沿って提供した情報を評価してもらったことが連携を強くしてくれました。

廣井 現在連携が良好に進んでいるのは、「病院側に広く門戸を開けていただけていること」がとても大きな要因だと感じております。例えば、疑義照会などの問い合わせの際、厳しい対応を受けてしまうと、それ以降の問い合わせに躊躇してしまいます。その点において、相澤病院さんは普段の疑義照会も含め、「常に受け入れる姿勢」でいてくれています。これらが、良好な連携をより密にできている要因と感じています。

木村 その他には、顔が見えることが大事だと思っています。電話だけでは名前は覚えるものの顔はわからず、口調や声のトーンで勝手にイメージを作ってしまいがちです。一目会って顔がわかるだけで、次から電話するときに印象が良くなることがあるのではないかと思います。この地域の薬薬連携が進んでいるのは、多くの薬剤師が顔見知りになってきているからではないかと思っています。話しにくい内容の電話でも、相手の顔を知っているというだけでよりコミュニケーションが取りやすくなる印象をもっています。こんなに顔が見えていて、こんなに門戸を開いている相澤病院を中心としたこの地域のつながりは、これぞ薬薬連携なのではないかと思います。

より良い薬薬連携をめざす薬剤師へ 〜まずは小さな医療圏でできることからやってみる

廣井 薬薬連携を取り組むまでには勇気がいりますが、一度始められればハードルは下がります。「まずはやってみること」が大切だと思います。薬薬連携のキャッチボールを始めたい病院は多いと思われますので、薬局側と病院側それぞれで一歩を踏み出し、お互いを重んじればキャッチボールが始まる地域は多いと思います。

中村 そして、できることから始めてみるのがいいのではないでしょうか。私たちもいきなりステップアップレビューを始めた訳ではなく、一つ一つできることから徐々に積み重ねていきました。また、保険薬局薬剤師のみなさんが忙しいなかで時間を費やして書いてくださるトレーシングレポートは、相澤病院にとって本当に宝物だと思っています。そのために費やしてくれた時間も大事にしなくてはならないと思っています。

木村 小さな医療圏で関係性ができれば、その範囲が広くなっても連携を築けるのではないかと思います。まずは1つの病院と門前薬局といった小さな医療圏で関係性を作って、同じように関係性を作った隣の病院とタッグを組み、それが芋づる式に大きくなっていけばどんどん広がっていくと思います。患者さんのための医療の質向上という同じ方向をみんなが向いていれば、キャッチボールはできると思います。最初はできることからやってみて、小さな医療圏同士が手を組めば、おのずと薬薬連携は大きくなるのではないかと思います。

淺野 私もその通りだと思います。この地域の取り組みは、小さな現場の意見から始まったものばかりです。現場の声を上げていくことはとても大切で、始めから大きく取り組もうとすると実現は無理なのではないかと思います。お薬手帳も最初は小さな地域から始まって広がり、今は全国に普及しました。ステップアップレビューのような病院と保険薬局による良い取り組みがさらに広がることで、より大きな薬薬連携につながっていくと思います。

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