公開:2022年2月1日
更新:2024年9月

がん患者さんとのコミュニケーション

マンガで学ぶ!がん患者さんとのコミュニケーション
第5回「自己判断でOTC医薬品を服用している患者さん」

企画・編集:日本医科大学付属病院 薬剤部 係長 輪湖 哲也 先生

解説

各選択肢のポイント

処方薬以外に服用している薬やサプリメントがないかを確認した

●患者さんとの信頼関係が築かれていない状態のまま、一方的に他の薬やサプリメントの服用を確認した結果、患者さんはさらに心を閉ざしてしまった

「ア:処方薬以外に服用している薬やサプリメントがないかを確認した」場合より

頭痛の状況を把握するために、頭痛の頻度や通院歴などを確認した

●患者さんとコミュニケーションをとりながら、頭痛の通院歴の確認や患者さんに合わせた情報提供を行った

「イ:頭痛の状況を把握するために、頭痛の頻度や通院歴などを確認した」場合より

●「日誌は患者さん自身のため」ということを理解してもらえるように説明した

「イ:頭痛の状況を把握するために、頭痛の頻度や通院歴などを確認した」場合より

●後日、患者さんが記入した日誌を持ってきた時には、書き続けたことを評価し、頭痛の頻度や服薬状況をきちんと確認した

「イ:頭痛の状況を把握するために、頭痛の頻度や通院歴などを確認した」場合より

コミュニケーションポイント

今回のような自己判断でOTC医薬品を服用するEさんもそうですが、特にがん患者さんでは、病気や症状を改善するために、強い思いや願いを持って行動する患者さんが多くみられます。そのような患者さんの思いを無視して、医療従事者の強い正義感だけで正面からぶつかりすぎると、上手くいかないことは多々あります。一歩引いて、客観的な情報を提供しつつ、患者さん自身が考え、行動する中で気付けるように促すことが大切です。

気軽に買えるOTC医薬品

処方箋なしで購入が可能なOTC医薬品は、少し体の不調があるときにも手軽に利用できる薬で、医薬品全体の生産金額ではOTC医薬品が約10%を占めています(図1)1)。OTC医薬品を使用(購入)する理由として、「近くに薬局・薬店があり一般用医薬品を購入しやすいから」38.6%、「忙しくて病院や診療所に行く時間が取れないから」27.8%と、時間がなくても利用できる便利さがOTC医薬品の購入につながっていることがわかります(図2)2)
その一方で、OTC医薬品との併用によって医療用医薬品の効果に重大な影響を及ぼすことが懸念されています。また、健康イベントの参加者や保険薬局の利用者51名を対象に、日常的に服用している医療用医薬品、OTC医薬品、サプリメントなどの実態調査を行ったところ、医療用医薬品とOTC医薬品を併用していた方が13名(25.5%)であったことが報告されています3)。がん治療を受けている患者さんにおいても、処方薬の他に自己判断でOTC医薬品を服用している可能性を念頭に対応することが大切です。

図1:医薬品生産金額(平成30年度)

医療用医薬品:医師若しくは歯科医師によって使用され、又はこれらの者の処方せん若しくは指示によって使用されることを目的として供給される医薬品。

一般用医薬品:医療用医薬品以外の医薬品のうち、配置用家庭薬以外の医薬品。

配置用家庭薬:医療用医薬品以外の医薬品のうち、主として配置用家庭薬に用いることを目的として供給される医薬品。

図2:OTC医薬品を使用(購入)する理由(複数回答、n=708)

ネットモニターを利用した3,240名を対象とした一般用医薬品(OTC医薬品)に関する調査。

薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)について4,5)

片頭痛や緊張型頭痛の方が、頭痛の治療薬を過剰に使用すると、頭痛の頻度が増えてきて、連日のように頭痛が起こるようになります。これを薬剤の使用過多による頭痛といいます(表1)4,5)
薬剤の使用過多による頭痛は、痛みに対する不安から、薬を早めに飲んだり、頭痛がないのに薬を飲むことで、薬の効果が弱くなり、さらに頭痛がひどくなり、薬を飲むという悪循環に陥ります。薬剤の使用過多による頭痛にならないためにも、薬を連日飲んだり、薬の効果がなくなってきたと思ったら、自己判断で薬を飲むことはやめて、早めに頭痛専門医に相談することが重要です。
薬剤の使用過多による頭痛の治療は、原因の薬剤をやめることです。やめることで頭痛が治る方が7割ですが、3割の方が再発するといわれています5)。その他の治療には、予防薬を使用したり、重症の方は入院で治療することもあります。

表1:国際頭痛分類 第3版(ICHD-3)による薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)の診断基準4)

A.以前から頭痛疾患をもつ患者において,頭痛は1ヵ月に15日以上存在する

B.1種類以上の急性期または対症的頭痛治療薬を3ヵ月を超えて定期的に乱用している

C.ほかに最適なICHD-3の診断がない

*薬剤の使用過多による頭痛で最も多いとされているのは、複合鎮痛薬による乱用頭痛です。複合鎮痛薬は市販の鎮痛薬が代表例です。気軽に手に入りやすいこともあり、鎮痛薬の飲みすぎには注意が必要です。頭痛ダイアリーを使用して服薬日数を確認すると良いでしょう5)

1)厚生労働省医政局, 薬事工業生産動態統計年報の概要. 2019年
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450151&tstat=000001147606&cycle=7&tclass1val=0

2)望月眞弓 ほか, 平成25年度 厚生労働科学研究費補助金(厚生労働科学特別研究事業).一般用医薬品の地域医療における役割と国際動向に関する研究
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2013/131031/201305012A_upload/201305012A0008.pdf(2022年1月閲覧)

3)赤沢学 ほか, 公益財団法人 一般用医薬品セルフメディケーション振興財団 平成22年度調査・研究報告書. 処方薬とOTC薬の併用に関する実態調査
https://www.otc-spf.jp/wp-content/uploads/2021/01/h22b_02.pdf(2022年1月閲覧)

4)国際頭痛学会・頭痛分類委員会 著, 日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会 訳, 国際頭痛分類 日本語版 第3版. P118. 2018. 医学書院

5)日本頭痛学会 ホームページ, 頭痛について知る
https://www.jhsnet.net/ippan_zutu_kaisetu_05.html(2022年1月閲覧)

※本コンテンツは患者さんとの円滑なコミュニケーションに向けたヒントを提供するものであり、特定の製品や治療法を推奨するものではありません。

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