2019.10.31

がん患者さんとのコミュニケーション

マンガで学ぶ!がん患者さんとのコミュニケーション
第4回「健康食品が気になる患者さん」

企画・監修:国立がん研究センター東病院 シーズ開発推進部/薬剤部 野村 久祥 先生

解説

各選択肢のポイント

健康食品は危険であると全面的に否定し、絶対に内服しないように伝える

●患者さんの意見を聞かずに、健康食品を全面的に否定した

「ア:健康食品は危険であると全面的に否定し、絶対に内服しないように伝える」場合より

●健康食品の副作用の事例だけを一方的に説明した

「ア:健康食品は危険であると全面的に否定し、絶対に内服しないように伝える」場合より

「まずは傾聴して、患者さんの希望を聞く。その後、広告の意味を説明し、健康食品の効果は明確ではないことを伝える」場合

●患者さんの意見を傾聴し、共感した

「イ:まずは傾聴して、患者さんの希望を聞く。その後、広告の意味を説明し、
健康食品の効果は明確ではないことを伝える」場合より

●医薬品と健康食品の違いを患者さん自身が納得できるまで説明した

「イ:まずは傾聴して、患者さんの希望を聞く。その後、広告の意味を説明し、
健康食品の効果は明確ではないことを伝える」場合より

●購入前にも相談してほしいことを伝えた

「イ:まずは傾聴して、患者さんの希望を聞く。その後、広告の意味を説明し、
健康食品の効果は明確ではないことを伝える」場合より

コミュニケーションポイント

<ア>は、薬剤師から完全否定されたことで、医療関係者に話さず服用してしまった結果、肝機能障害が起こった事例です。薬剤師を信頼して相談しましたが、全面否定されたことで心を閉ざしてしまいました。
エビデンスがない健康食品でも、まずは<イ>のように、傾聴して患者さんの意思を尊重します。そして、医薬品と違って効果が明確ではないこと、服用を勧められない理由をわかりやすく説明し、患者さん自身が納得するまで話し合うことが重要なポイントです。

がん患者さんにおける補完代替医療の利用実態

日本におけるがん患者さんを対象に行った厚生労働省の実態調査(2001年)では、約45%(1,382 / 3,100人)が、1種類以上の補完代替療法を利用していることが報告されています1)しかし、約61%が医師に相談したことがない1)ことから、健康食品類に興味はあるが医療関係者には相談しづらい内容であると考えられます。

*補完代替療法の内訳:漢方薬・健康食品・サプリメントなど(96%)、気功、灸、鍼(各4%)

がんの補完代替医療のエビデンス

抗がん薬(医薬品)と健康食品は、制度上大きな違いがあります。医薬品は薬機法で規制されていますが、健康食品を規制する法律はありません。国の制度としては、保健機能食品制度がありますが、医薬品ではないため効果を伝えることはできません2)。健康食品の「効果を実感した人のコメント」は、医薬品の「効果がある」とは大きな違いがあることを伝えましょう。

図1. 健康食品と医薬品の違い2)

特定保健用食品表示許可:1,067品目 (2019年7月30日現在)

多くの患者さんが健康食品に興味を持っているにも関わらず、日本のがん専門医751名を対象にした調査研究では、約80%の医師が健康食品類について「知識がない/ほとんどない」と回答しています。また、がんの補完代替医療品である漢方薬や健康食品類に対して、約82%の医師は「有効性はない」と考え、84%の医師が抗がん薬との相互作用を危惧しています3)。がんの補完代替療法クリニカル・エビデンスによれば、がん患者に対するシステマティックレビューが行われている健康食品類はいくつか存在するものの、明確な結論には至っていません4)。その一方で、健康食品を全面否定するほどの科学的根拠もないため、今の段階では「健康食品の推奨はできない」という状況といえます。健康食品に関する最新情報を常に更新することが重要です。

〈健康食品に関するwebサイト〉

1)Hyodo I. et al. J Clin Oncol. 2005; 23(12): 2645-54.

2)厚生労働省「健康食品」のホームページより作成

3)Hyodo I. et al. Cancer. 2003; 97(11): 2861-8.

4)緩和医療ガイドライン委員会 編集. がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス 2016年版. 2016. 金原出版.

※本コンテンツは患者さんとの円滑なコミュニケーションに向けたヒントを提供するものであり、特定の製品や治療法を推奨するものではありません。

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