公開:2018年8月31日
更新:2024年9月

がん患者さんとのコミュニケーション

マンガで学ぶ!がん患者さんとのコミュニケーション
第2回「脱毛が絶対に嫌な患者さん」

企画・編集:日本医科大学付属病院 薬剤部 係長 輪湖 哲也 先生

解説

各選択肢のポイント

化学療法が必要な状況について根拠を用いて説明する

●不安を傾聴することなく、有効性が患者さんを安心させると決めつけた

「ア:化学療法が必要な状況について根拠を用いて説明する」場合より

脱毛が嫌だという理由について詳しく話を聞く

●傾聴により、脱毛で娘さんの卒業式に出られなくなることが一番の理由であることを聞き出した

●化学療法を行わずに、ホルモン療法のみで治療できないかという疑問を解消した

●脱毛の対策と専門スタッフの紹介により、脱毛に対する不安を和らげた

「イ:脱毛が嫌だという理由について詳しく話を聞く」場合より

コミュニケーションポイント

Bさんは、お子さんの卒業式を控えていたこともあり、化学療法に伴う脱毛を受け入れられない状態でした。患者さんには治療を嫌だと思う理由がそれぞれあります。患者さんの詳しい理由を聞き、専門スタッフと連携するなど、それぞれの事情や理由にあった対応を心がけましょう。

化学療法への不安

化学療法を選択・施行する際に、脱毛が問題となるケースは少なくありません。第1回の解説でもお示しましたが、国立がん研究センターのアピアランス情報センターの調べ 1)において、乳がん患者さんにとって脱毛は最も苦痛度が高い副作用となっています(表)。

表:乳がん女性の副作用の苦痛度の順位 1)

化学療法による脱毛については、頭皮の冷却が効果的という報告はありますが、十分な予防策とは言えません。脱毛について相談がある患者さんのほとんどは、化学療法の必要性は理解している一方で、それでも脱毛を受け入れられない場合が多いです。そういう場合に、化学療法の必要性や効果について説明することも必要だとは思いますが、まずは、脱毛が嫌だというその理由をしっかり聞いてあげることが重要です。

脱毛をはじめ副作用を拒否する患者さんには、その拒否する詳しい「理由」が必ずあり、個々によって違います。イメージでなんとなく嫌だと考えている場合もあれば、実際の患者さんを見たり・聞いたりして嫌だと思っている場合、または今回の患者さんのように患者さん自身だけでなく家族など周囲への影響を考えて嫌だと思う場合もあります。その「理由」によって、対応・対策が変わってくることもあります。脱毛対策の十分な知識があれば、その場で患者さんの相談に乗ってあげられますが、今回のように専門スタッフの力を借りるのも手です。

化学療法を施行する際に脱毛は避けて通れず相談の多い副作用ですが、相談された際には一方的に説得するというスタンスではなく、患者さんの訴えをよく聞いた上で対策をチームで考えることが重要ですね。

1) Nozawa K et al. Psychooncology. 2013; 22(9): 2140-7

※本コンテンツは患者さんとの円滑なコミュニケーションに向けたヒントを提供するものであり、特定の製品や治療法を推奨するものではありません。

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