公開:2018年3月15日
更新:2024年12月
マンガで学ぶ!がん患者さんとのコミュニケーション
第1回「がん化学療法が不安な患者さん」
企画・監修: 京都大学医学部附属病院 薬剤部 副薬剤部長 野村 久祥 先生
解説
各選択肢のポイント
ア
化学療法の有用性を、薬剤師として科学的にわかりやすく説明する
●不安を傾聴することなく、有効性が患者さんを安心させると決めつけた
「ア:化学療法の有用性を、薬剤師として科学的にわかりやすく説明する」場合より
イ
何が不安かを傾聴する
●傾聴により、母親の嘔吐のイメージや生活の変化による不安が強いことを聞き出した
●不安に対し、薬学的なアプローチを交え、一つ一つ真摯に対応した
「イ:何が不安かを傾聴する」場合より
コミュニケーションポイント
Aさんは、ご家族の経験から吐き気に対する強い不安がありました。このように、昔の化学療法のイメージにとらわれている患者さんも中にはいらっしゃいます。支持療法も進化し続けていることを伝え、少しでも不安を和らげてあげましょう。
化学療法への不安
ア
化学療法の有用性を、薬剤師として科学的にわかりやすく説明する
●不安を傾聴することなく、有効性が患者さんを安心させると決めつけた
「ア:化学療法の有用性を、薬剤師として科学的にわかりやすく説明する」場合より
イ
何が不安かを傾聴する
●傾聴により、母親の嘔吐のイメージや生活の変化による不安が強いことを聞き出した
●不安に対し、薬学的なアプローチを交え、一つ一つ真摯に対応した
「イ:何が不安かを傾聴する」場合より
コミュニケーションポイント
Aさんは、ご家族の経験から吐き気に対する強い不安がありました。このように、昔の化学療法のイメージにとらわれている患者さんも中にはいらっしゃいます。支持療法も進化し続けていることを伝え、少しでも不安を和らげてあげましょう。
化学療法を初めて受ける患者さんは皆、不安を抱えています。国立がん研究センターのアピアランスセンターの調べ1)によれば、がん化学療法における患者側からみた苦痛度の順位において、女性の第1位は髪の脱毛、第2位は乳房切除、第3位は吐き気・嘔吐となっています(表)。患者さんは容姿の変化や悪心・嘔吐、しびれによるQOL低下を心配しています。また海外の論文では、「家族への影響」、「社会活動への影響」なども心配しているとの報告2)もあり、身体的苦痛を伴う副作用による不安の他、社会的な不安も抱えています。
表:乳がん女性の副作用の苦痛度の順位1)
患者さんは化学療法を行うことの必要性は医師から説明を受けています。しかし頭ではわかっているものの、漫然とした化学療法への恐怖感があります。そこで何が不安かを傾聴し、一つ一つの不安(副作用)に対して、薬学的視点から解決方法を見つけてあげることが重要です。薬剤で対応できる副作用に対しては、しっかりと服用することで十分に抑えられることを伝え、不安を解消してあげてください。また、社会資源の利用や生活上の注意点などは、看護師さんに説明をお願いするなどして、チームとして患者さんをサポートしていきましょう。
初めて抗がん治療を受ける患者さんにとって、抗がん治療はまるで初めての航海に出るようなものです。海を渡った先に何があるかを話すよりは、航海の途中に起こるかもしれないことに、一つ一つ準備するものを教えることで、遠く感じていた大陸にも辿りつけるように思えてきます。実際に航海するのは患者さん自身ですが、航海の途中に何かあっても、僕らがサポートすることを伝え、治療を完遂できるように支えられる医療従事者になっていきたいですね。
Nurse's Eye-View
筑波大学附属病院 看護部 がん看護専門看護師 風間郁子 先生
患者さんとのコミュニケーションは、患者さんに対面した時から始まります。患者さんの発言だけでなく、表情や態度など、患者さんの非言語的なメッセージにも注目しましょう。
化学療法への不安がありそうな様子を感じたら、率直に「ご心配なように見えますが、気がかりなことはありますか?」と患者さんの気持ちに配慮しているメッセージを伝えましょう。医療者はきちんと指導しなければという思いから、一方的に自分の専門知識を伝えがちですが、コミュニケーションは相互的なやりとりです。話の途中で質問を促すなど、患者さんが自分の思いを発言できる機会を作り、話を聞く姿勢を見せることで、患者さんは自分の不安や思いを伝えやすくなり、また、医療者が寄り添い共感を示す態度により安心感が生まれるでしょう。そして不安を丁寧に聞くことで、化学療法を行う上での患者さんのニーズや問題点の理解が深まり、より個別的な指導や支援につなげることが可能になると思われます。
1) Nozawa K et al. Psychooncology. 2013; 22(9): 2140-7
2) Carelle N et al. Cancer. 2002; 95(1); 155-63
※本コンテンツは患者さんとの円滑なコミュニケーションに向けたヒントを提供するものであり、特定の製品や治療法を推奨するものではありません。