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2018年度診療報酬改定

無菌製剤処理料【注の見直し】

施設基準適合の医療機関の算定要件拡大

2018年度診療報酬改定では、無菌製剤処理料の「注」に関して見直しを行い、厚生労働大臣が定める施設基準に適合し、地方厚生局長などに届け出た保険医療機関で、無菌製剤処理料の算定要件が拡大され、皮内注射や皮下注射、筋肉内注射が追加された。

 皮内注射や筋肉内注射を追加


患者に使用する薬剤について、必要があって無菌製剤処理が行われた場合は、当該患者に係る区分に従い、所定の点数を算定することになっている。今回の改定では、皮内注射や皮下注射、筋肉内注射をその要件に追加した。

無菌製剤処理料に関する施設基準については、▽2人以上の常勤の薬剤師がいること▽無菌製剤処理を行うための専用の部屋(内法による測定で5平方メートル以上)を有していること(なお、平成26年3月31日において、現に当該処理料の届出を行っている保険医療機関については、当該専用の部屋の増築又は全面的な改築を行うまでの間は、内法の規定を満たしているものとする)▽無菌製剤処理を行うための無菌室、クリーンベンチまたは安全キャビネットを備えていること―となっている。

無菌製剤処理料の対象患者については、無菌製剤処理料1は、悪性腫瘍に対して用いる薬剤であって細胞毒性を有するものに関し、▽皮内注射▽皮下注射▽筋肉内注射▽動脈注射▽抗悪性腫瘍剤局所持続注入▽肝動脈塞栓を伴う抗悪性腫瘍剤肝動脈内注入または点滴注射が行われる患者としている。

この場合、「悪性腫瘍に対して用いる薬剤であって細胞毒性を有するもの」とは、独立行政法人医薬品医療機器総合機構法(平成14年=2002年=法律第192号)第4条第5項第1号の規定に基づき厚生労働大臣が指定した医薬品(平成16年=2004年=厚生労働省告示第185号)のうち、悪性腫瘍に対して用いる注射剤をいう。

無菌製剤処理料2は、動脈注射または点滴注射が行われる入院患者のうち、▽白血病▽再生不良性貧血▽骨髄異形成症候群▽重症複合型免疫不全症等の患者および後天性免疫不全症候群の病原体に感染し抗体の陽性反応がある患者であって、無菌治療室管理加算もしくはHIV感染者療養環境特別加算を算定する患者またはこれらの患者と同等の状態にある患者を挙げている。また、中心静脈注射または植込型カテーテルによる中心静脈注射が行われる患者に該当する場合も無菌製剤処理料2の対象患者になる。

届出に関する事項については、当該保険医療機関に勤務する薬剤師の氏名、勤務の態様(常勤・非常勤、専従・非専従、専任・非専任の別)および勤務時間を所定の様式を用いて提出する必要がある。調剤、医薬品情報管理、病棟薬剤業務、薬剤管理指導または在宅患者訪問薬剤管理指導のいずれに従事しているか(兼務の場合はその旨)並びに無菌製剤処理業務に従事している場合は、その旨を備考欄に記載する。

また、調剤所や当該届出に係る専用の施設の配置図、平面図(クリーンベンチ等が配置されている場合はその位置を明示すること)を添付することが求められている。

 「あらゆる投与経路での治療に対応が必要」


無菌製剤処理料に関しては、2017年10月23日に開かれた中央社会保険医療協議会診療報酬調査専門組織(医療技術評価分科会)の会合で、日本薬学会の医療技術再評価提案書(申請技術名=無菌製剤処理料1の算定要件の見直し)が示された。

提案の概要については、「現在対象となっている動脈注射、抗悪性腫瘍剤局所持続注入、肝動脈塞栓を伴う抗悪性腫瘍剤肝動脈内注入または点滴注射のみでなく、皮内、皮下注射等、他の投与経路の場合でも無菌製剤処理料1を算定できるよう、投与経路限定の撤廃を要望する」と記載。再評価が必要な理由に関しては、「抗がん薬の新薬の増加、レジメンの多様化により抗がん薬の無菌調製のニーズが増える中、あらゆる投与経路での治療に対応が必要なため、再評価を要望する」として算定要件の拡大を求めた。

再評価の根拠・有効性(治癒率、死亡率、QOLの改善など、学会のガイドラインなど)については、「医療安全などの観点から、抗悪性腫瘍剤の調製は、投与経路に関わらず無菌的に行われる必要がある」と指摘していた。

施設基準に関する▽施設の要件(標榜科、手術件数、検査や手術の体制等)▽人的配置の要件(医師、看護師等の職種や人数、専門性や経験年数等)▽その他の要件(遵守すべきガイドライン等)―の3項目は、いずれも「現状と変更なし」と記載しており、安全性・副作用等のリスクの内容と頻度に関しては、「副作用などのリスクはない」としていた。


【参考にした厚生労働省のホームページ】
中央社会保険医療協議会総会(第389回)答申について 別紙1-1(医科診療報酬点数表)
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000193524.pdf
平成30年厚生労働省告示第43号 別表第1(医科点数表)<第2章>注射 G020無菌製剤処理料
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000196293.pdf
平成30年3月5日保医発0305第1号 別添1(医科点数表)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000205632.pdf
平成30年厚生労働省告示第45号 第8 3無菌製剤処理料
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000196317.pdf
平成30年3月5日保医発第3号 第37の2 無菌製剤処理料
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000205634.pdf
中央社会保険医療協議会診療報酬調査専門組織(医療技術評価分科会)
(平成29年度第1回 医療技術評価・再評価提案書 提案書15)
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000181697.pdf

執筆:株式会社CBコンサルティング

本コンテンツは、厚生労働省の関連通知、疑義解釈資料(事務連絡)などをもとに作成しております。