公開:2024年05月31日
男女共同参画への取り組みは持続可能な医療の提供につながる
~医師の多様な働き方を支える就業環境の整備~
長時間労働の是正によって持続可能な医療の提供をめざす医師の働き方改革が進められるなか、その実現のため、男女共同参画の推進にも焦点が当てられています。北海道大学病院男女共同参画推進室において、女性医師はもとより男性医師も含めた育児支援やキャリア支援などに尽力されている古田恵先生に、男女共同参画への取り組みが重視される背景や同院の具体的な取り組み、支援のポイント、今後の課題などについてお話を伺いました。
(取材日時:2023年9月28日(木)
取材場所:TKPガーデンシティPREMIUM札幌大通)
北海道大学大学院医学研究院呼吸器内科学教室
北海道大学病院呼吸器内科/男女共同参画推進室
古田恵先生
第1回 男女共同参画推進の背景・意義、
北海道大学病院での取り組みの概要
第1回では、男女共同参画への取り組みが重視される背景や、その意義、そして、北海道大学病院における取り組みの経緯や概要について伺います。
男女共同参画への取り組みが重視される背景 〜女性医師の割合増加、働き方改革推進〜
近年、医療現場においても、男女共同参画への取り組みが重視されるようになってきました。その背景の一つには、女性医師の割合が増加してきたことが挙げられます。日本国内の医師のうち女性医師の割合は、全体では22.8%(2020年)、29歳以下では36.3%(2020年)となり1)、医師国家試験の合格者に占める女性の割合は34.1%(2023年)と4割に近づいています2)。当院では女性医師の割合は約20%程度に留まりますが、研修医といった若手の医師に占める女性医師の割合は年々増えてきています。診療科によって違いがありますが、私が所属する呼吸器内科では、現在、約3割が女性医師となり、その多くは若い世代です。
もう一つの背景としては、医師の働き方改革の推進があります。医師の長時間労働を改善することが求められ、いかに効率よく業務を進め、継続的に就労できる環境を整えていくかが課題となっています。女性医師の場合、働き盛りの年代に出産や子育てなどのライフイベントが集中します。そのため、ライフイベントによって離職してしまうと、実際に働いている医師数が少なくなり、医師同士の業務の分担も難しくなります。出産や子育てによる女性医師の離職を防ぎ、働き続けられるようにすることが、医師の働き方改革に取り組むうえでの重要なポイントにもなると思います。
文献
1)厚生労働省 : 令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況. 2022
2)厚生労働省 : 第117回医師国家試験の合格発表. 2023
男女共同参画の取り組みは未来の医療の基礎作り 〜子育てへの男性医師の参加〜
さらに、最近では、子育てにかかわりたいという男性医師が増えていると感じます。2022年には育児・介護休業法が改正・施行され、産後パパ育休制度が創設されるなど、社会的に男性の育児休業取得を進める環境整備が行われてきたこともあって、一昔前に比べると、子育てに対する男性医師の意識は変化してきています。特に今の30代前後の医師は、子育てへの積極的な参加を望む意識が強い印象を受けます。当院では、育児休業を取得する医師は年間6~10人ほどで、そのうち数名は男性です。次の時代の医療は若い世代の医師が支えていく訳ですから、男女共同参画への取り組みは、未来の医療の基礎作りにもかかわる活動であると言えます。これから先の医療を担う若い医師の考えを理解し、尊重していくことが大切だと思います。
北海道大学病院における男女共同参画への取り組みの経緯、活動目的
当院では、2010年から女性医師等就労支援事業がスタートしました。その後、2014年に北海道大学病院女性医師等就労支援室が正式に発足し、本格的に支援活動が始まりました。当初は女性医師の支援を目的としていましたが、社会の多様化が進み、女性だけではなく男性医師も含めたキャリア支援の必要性が認識され、ともに活躍できる体制を整えるため、2017年に現在の男女共同参画推進室へと名称が変更されました。
当院男女共同参画推進室では、活動目的として、「全ての職員のキャリアの継続が可能となるワーク・ライフ・バランスの支援」を掲げています。この実現のために各種業務に当たっており(図1)、男性医師と女性医師がともに、妊娠や出産、子どもの誕生や子育てなどをしながら継続的に就労できる支援システムや、家庭生活を大事にしながらキャリアアップできる就労システムの構築や充実に取り組んでいます(図2)。特に重点を置いているのが、育児支援、相談窓口対応、キャリア支援の活動です。それぞれ具体的な取り組みについてご紹介します。
第2回では、北海道大学病院における具体的な育児支援、相談窓口対応、キャリア支援などの取り組み、男女共同参画推進のポイントや課題、展望などを伺います。
男女共同参画への取り組みは持続可能な医療の提供につながる
~医師の多様な働き方を支える就業環境の整備~
2024年05月31日公開
北海道大学大学院医学研究院呼吸器内科学教室
北海道大学病院呼吸器内科/男女共同参画推進室
古田恵先生